地域の未来を変えたいあなたへ…地域活性化と仕事を両立する住吉さんが“いちばん”伝えたいこと。

こんにちは!ココロマチインターン生の高橋です。

最近、地方創生・地域活性化が盛り上がっていますね!

学生の皆さんの中にも「自分も地域を盛り上げたい!」と思うようになった人、「好きな地域の魅力を発信したい」という人がいるのでは?

私が地域活性化に憧れを抱くようになったきっかけは、北海道の焼尻島でのボランティアでした。美しい自然と豊かな海の幸、島の人々の温かさ…たった10日間でしたが、すっかりこの島に魅了されました。

しかし、同時に厳しい現実も知りました。島の人口が急激に減少しているのです。

何とかしたいと思いました。自分が少しでも力になるのなら…ですが、私には何のスキルも知識もありません。おまけに就活生という。(泣)

仕事にも地域活性化に対してもモヤモヤを抱えていたところ、OB訪問でお話を伺ったのが住吉昂太さん。

住吉さん

住吉昂太さんのプロフィール

慶應義塾大学SFC在学中、地元静岡で『「空から眺める世界遺産 三保松原」地元の魅力を伝えたい!』プロジェクトの共同代表として、クラウドファンディングを活用した三保松原・太平洋・富士山を空から眺める気球ツアーを開催。その後、『世界遺産三保松原 地域活性化プランコンテスト』を立ち上げ、大学生を対象にした合宿型コンテストを行う。卒業後、静岡の鉄道会社に就職。商業不動産の運営・プロモーションを通じてエリア価値の向上・まちづくりに従事後、2018年度より人事採用担当へ。その傍らで、観光地のドラマ型音声ガイドを製作する(株)Otonoの取締役も兼任。その他様々な地域活性化イベントに携わる。

なんと仕事と地域活性化活動の二足のわらじで地元、静岡で活躍しているという住吉さん。

そんな住吉さんが大切にしているのはスキルや知識ではなく、地元に対するある思いでした。今回改めて行ったインタビューを通して、住吉さんの言葉を皆さんに共有できたらと思っています。

 

「がっかりスポットを変えたい」がきっかけ

気球

空から眺める世界遺産「三保松原」地元の魅力を伝えたい! Webサイトより

 

――学生の頃に地域活性化活動として、最初に気球ツアーを始めたきっかけは何でしょうか?

始めたきっかけは一言で言うと、悲しさで。大学3年生のときに三保松原が世界遺産に選ばれたんですが、そこは僕が小さい頃からよく行っていた大好きな場所でした。だから世界遺産に選ばれたときは率直に「やったー」と思っていました。だけど実際、観光客が大勢来たときに、みんな「がっかりスポット」って言うんです。「わざわざ九州からきたのに、富士山見えないやん」みたいな。観光ガイドには大抵一番いいときの写真を載せているので、思っていたのと違うというギャップのせいでそう言われてしまうのが、非常に悲しくて。自分が好きなものを否定されると悲しいじゃないですか。それでなんとかしたいなと思ったのが一番最初です。

 

――どんな仲間に呼びかけて始めたのですか?

同じ静岡出身の、同じ大学の人に声をかけました。そのときはこれをやろうって決めていたわけじゃなくて、こういう状況だからなんとかしたいよね、といった軽い感じで始めました。

 

価値ある活動を続けたい

 

――その後、地元の鉄道会社に勤めようと思った理由は何ですか?

理由は3つあって。一つは学生時代続けていた活動を続けたかったから。続けるためには地元に戻ったほうが、今までの繋がりもあるので、動きやすいと思いました。2つ目は、鉄道会社は本当に幅広くなんでもやることができるので、いろんな側面から静岡に対してアプローチできると思ったから。3つ目が、そこで働いている人たちと同じ方向を向いてやれると思ったからですね。

 

――地域活性化プランコンテストは就職なさってからも開催していらっしゃいますよね。学生時代から始めた活動を社会人になっても続けたのはなぜですか?

それは、単純に価値があると思っていたからです。僕は「新卒でも二足のわらじで地域に関われる」という静岡でのロールモデルになりたくて、学生の時にやっていたことを社会人になっても続けられるんだぞという証明をしたかったんです。地域活性化活動に限らず、学生のときに社会のためになることをやっていても、社会人になってやめてしまう人って結構います。もちろんそれはそれでよくて、自分の仕事に集中するという生き方もいいと思うんです。だけど、やりたいけど仕事が理由でやれないというのは勿体無いなと思っていて。だからもし一つでも学生の時にやっていたことで本当に価値があると思うことであれば続けてもいいんだよ、ということを伝えたかった。

プランコンテストで三保松原を視察する学生たち

プランコンテストで三保松原を視察する学生たち

他の事例を生かしてアイディアを形に!

 

ここで、住吉さんの地域活性化の活動履歴を紹介します!

住吉さん2

住吉さんの活動履歴

■学生時代(2013年〜2015年)
・「空から眺める世界遺産 三保松原」地元の魅力を伝えたい!(共同代表)

・世界遺産三保松原 地域活性化プランコンテスト(代表)―社会人1年目まで

■社会人(2015年〜2018年)
・メディアキャンプin清水(NPO運営)
「地域の魅力は地域の”人”に宿る」という思いのもと、全国の大学生が静岡県静岡市清水区に集結し、地域の魅力的な人にフォーカスしたドキュメンタリー映像を制作するキャンプ。

Otono[オトノ](取締役)
「観光地を音で劇場化する。」を目指した「ドラマ型」音声ガイドを製作。
多彩な声のガイドとバラエティに富んだストーリーを用意し、観光客はスマホでオトノを聞きながらその地を巡るだけで、全く別の世界に飛び込んだような体験ができる。

・シズオカなかまつり
「東京にいるけど、いつか静岡に関わりたい・帰りたい」、そう思っている人たちが知り合い仲良くなるための場を主宰。

 

――今まで本当にたくさんの活動をなさっていますよね。地域活性化のアイディアはどのように出しているのですか?

基本的には、他の地域の事例を参考にして、その地域に合わせたアレンジをしています。アイディアというのは全く新しいものは滅多になくて、既にあったものに少し違うものを加えたり、既存のものを組み合わせたりすることで生まれてくる。もし他の地域の事例で自分達の地域でやっていないことであれば、それは自分達の地域にとって価値があると思うんです。だけど地域ごとに状況は異なるので、ただそのまま使ってしまうとうまくいかない。だから地域ごとの状況に合わせて、中身をちょっと変えていくことが必要なんです。

 

――活動メンバーはどのように集めましたか?

最初のコアメンバーはある種の偶然の縁みたいなものでした。その後はもともと知っている人で、自分からやろうよって声かけた人もいれば、たまたま知り合った人で、一緒にやろうってなった人もいますし、そういう人が他のメンバーを集めてくれたりして、縁を広げていったという感じです。一度、「気球やった人」というように活動の履歴が増えていくと、紹介してもらいやすくなりましたね。

 

仕事との両立は?

 

――地域活性化活動を本業と両立していると思うんですが、本業と両立してよかったことはありますか?

よかったことでいうと、本業と副業が全く別っていうよりはどちらも地域に関わることなので、そこがうまく交差して、相乗効果になったと考えています。勤めている鉄道会社のプロモーションやイベントで地域活性化活動でやっている事業とコラボしたり、副業で立ち上げた音声ガイドの事業(Otono)も本業の他部署の企画と共同させていただいたりだとか、地域っていう文脈でつなげられるところがあるのがとても良いと思います。

 

――逆に大変だったことはありますか?

やっぱり時間的なところの難しさですね。本業終わりに行うので体力的にきつかったり、打ち合わせる時間があまりなかったりといった時間的な制約はあります。ただ今の時代、昔に比べるとそういった制約もクリアしやすくなっていて。というのも、いろんなITツールを活用してリモートワークがすごくやりやすくなったからです。打ち合わせもビデオ会議やネット上のチャットとかで対応しています。

 

――ではいいことの方が多い?

そうですね。副業で面白そうなことやってる人みたいな、社内でもそう言った見られ方をするので。中には嫌がる人もいるけど、そこはいいところだと思います。

 

――住吉さんは仕事と地域活性化活動をどういったバランスで行っていますか?

どちらも静岡のためになることをしたいと思ってやっているので、あまり分けて考えていないです。もちろん、地域活性化活動はやりたいことをやりたい人とやれるといった自由の幅は仕事よりも大きいですし、仕事以外で一生懸命になれることがリフレッシュになっています。本業にプラスになることも多いですし。ですが、仕事も地域活性化活動も自分の目指すところは一緒だと思っています。

 

地域活性化は誰でもできる

 

――今後、やってみたいことはありますか?

最近は東京にいる静岡出身の人や、静岡に関心がある人にどのように静岡と関わってもらうかを考えています。僕は静岡を挑戦者にとっての始まりの街にして、また戻ってきてくれる街にすることを目指しています。どんな街かというと、僕は3種類の「しみん」がいる街だと思っていて、志の民の「志民」、支える民の「支民」、思う民の「思民」。この3つの「しみん」を増やすことが大切だと考えています。まず「志民」は挑戦者。まさにプロジェクトをやっている人のこと。だけど、それは一人ではできませんよね。だから一緒にやってくれる、それを支える人が「支民」。プロジェクトを一緒にやることだけではなく、資金援助、情報をシェアしてくれる人もそう。それで最後が「思民」。これは住んでないけど、その地域のことを思っていてくれて、なんらかの形で関わってくれる人です。

 

――3つの「しみん」は初めて聞きました。

正式な言葉ではなくて造語なので(笑)最近は多くの自治体で移住者を増やすことが奨励されていますが、日本全体の人口が減っている中でどの地域も移住促進をすると、人の奪い合いになってしまいますよね。だから僕は、定住人口を増やすこと以外でも、地域への提供価値の総量を高めていく方法も大切なんじゃないかと。その地域に住む一人一人が地域に貢献する量・質を高めること、住んでいなくても関わってくれる人・貢献してくれる人が増えること、この二つが大事になる。それが3つの「しみん」のことです。最近やりたいことというのは、つまり、「思民」をいかに増やしていくかということです。そのために今、種まきとしてやっているのは、東京で若手の静岡にゆかりある人たちのコミュニティを作る(静岡なかまつり)こと。あとは具体的にどういうコンテンツでやっていくかですね。

コンテストで様々な地域から集まった大学生たち

コンテストで様々な地域から集まった大学生たち

――地域活性化に関わりたい学生に一言お願いします。

正しさよりも楽しさをまずは大事にしたほうがいいんじゃないかな。地域づくりって秘密基地作りに似ているんです。最初は何もなかったところに秘密基地を自分で作り出して、だんだんできてくるとその場所を守りたいとか、人を呼びたいとか思うようになりますよね。それって地域おこしに近い。最初からその地域が大好きという人はそんなにいなくても、やってるうちに好きになり、自分なりの良さを見つけて、守りたい、人を呼びたいと思うわけです。それで、秘密基地って作ることを正しいと思って作ってはいないじゃないですか、楽しいから作っているわけで。だから地域活性化も子供の頃に楽しくて秘密基地を作っていたような気持ちから入ればいいと思います。それが地域のために正しいか、必要かどうかはゆくゆく考えればいい。最初僕が始めた気球も「なんか気球で富士山と松原を空から見たら綺麗じゃね?」とかそんなところから始まっているので。そうしてやっていくうちに、今まで興味がなかった人がきてくれたり、仲間が増えていきました。

三保松原での結婚式の様子

コンテストをきっかけに結婚したご夫婦。三保松原での結婚式

僕が地域活性化のすごくいいところだなって思うのは誰も仲間外れにしないことだと思っていて、例えば東京オリンピックのプランニングとかだったら本当に一部の人しかできないですけど、地域の企画は誰でもできるし、三保だと松葉拾い(松林の整備のために行う習慣が地域にある)は小学生でもやれるし、おじいちゃん、おばあちゃんもやれる。立場とか年齢とかそういうもの関係なくみんなでやれるっていうのが地域の活動の良さだと思っています。それで地域の活動を通じて地元の人と県外の人とか出会うことのなかった人たちが出会って仲良くなる。それが仕掛けた側としてはすごく嬉しい。

おわりに

今まで地域活性化の活動やイベントというと、特別なスキルやリーダーシップを持った人が主導していくという印象がありました。ですが、住吉さんのお話を聞くなかで、地域活性化で最も大切なのは「その地域を愛する気持ち」であり、そして「誰もが楽しみながら参加できる」ことであると気づかされました。

仕事についても色々アドバイスをいただきました。仕事でも地域活性化でも、自分がどんな思いを持っていて何をしたいかを見つめ直すことから始まるのだと思います。

私の最終目標は、お世話になった焼尻島に恩返しをすることです。そのために様々な経験を積み、いつか自分のアイディアを形にしたいです。きっとできるはず!

今回の記事が、皆さんにとってやりたいことを実現するために一歩踏み出すきっかけになってくれたら嬉しいです。