地域やまちに興味を持っている学生のみなさんの中には、
「地方創生や地域活性に興味はあるんだけど、実際にどんな仕事があるの?」
「まちづくりはしたいけど具体的な仕事がイメージしにくい…」
「地方にやりたいことやスキルが活かせるのか分からない」
といった疑問や悩みを持っている人は多くいるのではないでしょうか。
そこで今回は、キャリアとしての地域との関わり方について分類し、実際に「ローカルキャリア」を実践している企業の取り組みやプロジェクトをご紹介したいと思います。
「未来のローカルキャリア」について一緒に考えていきましょう!
目次
今のあなたはどのタイプ?「地域への関わり方」で仕事を分類してみよう!
地域と関わる仕事といっても、まちづくりや都市開発だけでなく、制度や支援のしくみをつくる、地域の魅力発信をする、地方でビジネスを立ち上げるなど、「地域との関わり方」の切り口は意外にも幅広いんです!
以前にHATAFURIで紹介しました「就活生の9割が知らない!? 公務員だけじゃない、地域・まちづくりに関わる仕事とその違い。」の記事では地域やまちに関わる仕事を「ソフト/ハード」で分類しています。
しかし、今回は上記の記事で紹介した仕事も含め、地域の内から関わる「インサイド型アプローチ」と外から関わる「アウトサイド型アプローチ」に大きく二分し、さらに関わり方の切り口を6つに分けて地域と関わる仕事を新たに分類してみようと思います。
※「インサイド型アプローチ」「アウトサイド型アプローチ」というのも、一般的なものではなく、今回の分類をする上でこのように呼称させていただいています。
インサイド型アプローチで関わる仕事
ここでは、地域の内から「ヒト・モノ・コト」を育てる・働きかけをすることを意味づけた「インサイド型アプローチ」で地域に関わる仕事を紹介します。
「地域×まちづくり」
「まち」には「ヒト・モノ・コト」がたくさん行き交っています。そんな様々な要素が行き交う「まち」を地域のコミュニティを巻き込みながら、活性化していくことを目標に編集するといった地域との関わり方です。
【例:まちづくり会社、鉄道会社(私鉄、地方鉄道)、コミュニティデザイナーなど】
「地域×観光」
それぞれの地域が持っている自然・食・文化・人との出会いといった「宝」を、地域の人々が主体的に発見・発信・保持していくという地域との関わり方です。
※ここでいう「地域の人々」は必ずしも地元の人というわけではなく、その地域に「愛着心」を持っている人も含まれていることにします。
【例:DMO、観光協会(地方自治体)など】
「地域×人材育成」
地域・まちを元気にするには「その地域を元気にしたい!」と思っている「ヒト」が必要です。その地域やまちを元気にしたいと思っている人の「ココロ」を育み、「カタチ」にするためにお手伝いをするといった関わり方です。
【例:人材育成系NPO団体/一般社団法人、社会企業家支援など】
アウトサイド型アプローチで関わる仕事
ここでは、地域の外から、地域やまちの「カタチ」や「オモイ」をつくる・伝えることを意味づけた「アウトサイド型アプローチ」で地域に関わる仕事を紹介します。
「地域×魅力発信」
地域にはぞれぞれの「地域らしさ」があります。その「地域らしさ」を外部の人々に知ってもらう、見に来てもらうための地域の情報発信をお手伝いするという地域への関わり方です。
【例:メディア(テレビ、ラジオ、新聞、出版など)、地域プロモーション・ブランディング、旅行会社など】
「地域×建物・土地」
多くの人の日常生活を物的面で支えている土地や建物を、地域の人々のニーズに合うように整え、流通させていくといった地域への関わり方です。地域の物質的側面を支える縁の下の力持ちのような存在ですね!
【例:不動産(ディベロッパー)、建築設計事務所、デザイン事務所(土木デザイン、ランドスケープデザインなど)、ゼネコン業界など】
「地域×調査・計画」
まちづくりなどは、その地域における課題の分析・理解→合意形成→目標設定といった順序で行われます。そのため、この過程形成に欠かせないのが調査や計画です。まちの現状を調査するだけでなく、まちづくりに関する知識や情報も提供します。調査・計画を通して専門的知識を地域に共有するといった関わり方です。
【例:コンサルティング、エリアマネジメント、広告会社など】
地域と関わる仕事の「現場」を知りたい!ローカルキャリアを実践している企業の取り組み
2では、「インサイド/アウトサイド型」といったアプローチの違いと、6つの切り口の組み合わせによって地域に関わる仕事を分類してきました。
しかし、「地域と関わる仕事」を考えるうえでは「どのように関わるのか」の他に「どこを拠点として関わるのか」といった点も重要なポイントとなるはずです。そこで、ここでは、「ローカルキャリアにおける拠点」を意味づけた「ローカルベース(地方/都市)」と「地域への関わり方」を組み合わせ、企業が実践している「地域」に関わる取り組みを紹介していきたいと思います。
インサイド型アプローチ×地方指向型
- 富山ライトレール株式会社
JR西日本から富山市とともにJR富山港線を引き継ぎ、2006年に開業しました。コンセプトは「地域に密着した安全・安心・快適で環境にやさしい公共交通を目指す」というものです。富山駅北から岩瀬浜を結ぶ日本初の次世代型路面電車(LRT)である「富山ライトレール」は、車体のカラーは7色あり、どれも富山の豊かな自然や未来を象徴したものとなっています。
ライトレール沿線の総合的なまちづくりは、駅アクセスの改善、増便事業など様々なサービスの向上によって、平日昼間を中心とする利用客の増加などに影響を与えました。また、廻船問屋が立ち並ぶ歴史的まち並みを見られる岩瀬地区は、「富山ライトレール」の開業によって観光地として脚光を浴びました。
利用者の減少が著しかったJR富山港線に、「公設民営」の考え方を取り入れた日本初のLRTによるまちづくりは、「地域」に様々な副次効果をもたらしています!
- 一般社団法人気仙沼地域戦戦略
宮城県気仙沼市が震災復興の柱に据えて取り組む観光戦略として「気仙沼DMO」に取り組んでいます。DMOとは地域の観光資源に熟知しており、地域と共に観光地域づくりを行う法人のことです。その他、職場体験プログラムや観光情報が掲載されている「気仙沼じゃらん」の発行など、観光を切り口とした地域振興事業に取り組んでいます。
会社名:一般社団法人 気仙沼地域戦略
事業内容:「しごと場・あそび場ちょいのぞき気仙沼」、気仙沼クルーカード事業、「気仙沼じゃらん」の発行など
インサイド型アプローチ×都市指向型
- 株式会社まちづクリエイティブ
「株式会社まちづクリエイティブ」は、地域活性を創造していくために、様々な視点から「まち」をデザインするまちづくり会社です。地方自治体から民間開発事業者まで、地域活性化を目指すクライアントに対して総合的なエリアマネジメントを提供しています。また、不動産など中古ストックの利活用を中心に、移住定住促進や起業支援まで多様な切り口から「地域」と関わっています。
今回は、「まちづクリエイティブ」が取り組んでいる事業の中から、千葉県・松戸駅前のモデルケース「MAD City」をご紹介します!この取り組みは、エリア内の空き家の利活用とクリエイティブ活動を結びつけて、地域活性化を目指しています。クリエイターへの活動支援や暮らしのサポートはもちろん、外部向けのイベントスペースの運営なども行っています。従来のまちづくりの手法にとらわれない、たくさんのヒトを巻き込みながら「クリエイティブなまち」を開拓していく、新たなまちづくりのモデルを提供しています!
会社名:株式会社まちづクリエイティブ
事業内容:不動産活用、エリアブランディング、ウェブメディア「M.E.A.R.L」、「MAD City」、「TAKEO MABOROSHI TERMINAL」、「SAI-KYO DIALOGUE LINE」など
アウトサイド型アプローチ×地方指向型
- 夕張新聞
東京から地元である夕張へUターンした二人の男性が、長らく運営されていなかった「夕張新聞」を再生しました。グルメやイベント情報を中心に夕張の日常を発信しています。
「ふるさと夕張」を多くの人に知ってもらいたという思いはもちろん、夕張にキャリアとして帰ってくる、あるいは飛び込む場所をつくりたいという二人の願いも、この「夕張新聞」に込められているのではないでしょうか。
事業内容:夕張市、市近郊における様々なジャンルの情報を発信しているローカルwebメディア
- 株式会社中川政七商店
1716年に創業し、麻織物をはじめ様々な工芸品を販売している老舗企業です。本社は奈良県にあり、近年は全国50店舗以上の直営店を展開しています。もともとは、高級麻織物「奈良晒(ならざらし)」の卸問屋として創業。時代の変化とともに生活雑貨の製造・販売を始め、十三代社長により工芸業界初のSPA(製造小売)業態を確立しました。「日本の工芸を元気にする!」というビジョンのもと、業界特化型の経営コンサルティング事業(初クライアントのブランド「HASAMI」)のほか、工芸の地産地消を目指す「日本市プロジェクト」など、活動の幅を多岐にわたり拡大しています。
会社名:株式会社中川政七商店
事業内容:生活雑貨の企画・製造・卸・小売、業界特化型経営コンサルティング、流通サポート「大日本市」など
アウトサイド型アプローチ×都市指向型
- UDS株式会社
「UDS株式会社」ではまちづくりにつながる「事業計画」、「建築設計」、「店舗運営」を一気通貫で手がけています。今回は、「UDS株式会社」が取り組んでいる数あるプロジェクトの中から2つの事業をご紹介します!
①「ここ滋賀」(2017年オープン)
1つめにご紹介するプロジェクトは、東京・日本橋にオープンした滋賀県の情報発信拠点「ここ滋賀」。UDSが滋賀県より企画、内装設計、運営業務を受託し、滋賀県とともに開業準備を進めてきたアンテナショップです。ショップ以外にも滋賀の食材を楽しめるレストランやフリースぺースを併設し、滋賀県の魅力を実際に見て、触れて、食べることができる体験型の発信を行っています!
②「薩摩川内市スマートハウス」(2014年オープン)
2つ目にご紹介するのは、エネルギーの街・鹿児島県薩摩川内市にて次世代エネルギー技術を提案するモデルハウスです。「UDS」が事業コーディネイターとして企画と設計を手掛け、開業後はコーディネイターが常駐し、地域活性化につながるフューチャーセンタープログラムやイベント等を行っています。
今年3月には、地域の皆さんとの対話から生まれたイベント「薩摩川内リバーフロントマルシェ」が開催されました。第4回目となる今回は「Make a landscape~あなたが誰かの風景になる~」をテーマに、来場者と出店者が一緒になり川辺の素敵な風景をつくることを目指しました。イベント当日は過去最多となる30店舗が出店し、多くの来場者で賑わい、沢山の風景が生まれたようです。
リバーフロントマルシェの様子はこちら https://www.uds-net.co.jp/article/8041/
- 株式会社ココロマチ
2500エリアを越える地域情報サイトやエリアガイド制作の実績で得たノウハウを活かして「人と地域」「人と人」をつなぐサービスを提供しています。
首都圏の再開発サイト「BEYOND2020首都圏未来予想図」や「南房総2拠点計画」、そして住みたい街探しを応援する地域情報サイト「itot」など都市圏の地域づくりや関わり方に関する情報を提供しています。
また、地方・都市をつなぐつたえる情報サイト「ココロココ」といった「地方と都市との架け橋」を目指した事業企画・運営もしています!
会社名:株式会社ココロマチ
事業内容:地域プロモーション事業(コンテンツ提供、メディア・広告、マーケティング、アプリケーションプロバイダ、イベント企画・運営など)
未来のローカルヒーローは君かもしれない!キャリアとして地域と関わる自分を想像してみよう。
これまで、地域と「どのように関わりたいのか」「ローカルベースをどこに持ってくるのか」の2つの視点から地域に関わる仕事を分類し、紹介してきました。
しかしながら、今回紹介してきた仕事の分類や企業の取り組みは、各々の「キャリアとしての地域への関わり方」であり、色々な仕事がある中でのほんの一部です。他にも地域に関わる仕事や取り組みは数多くあります。例えば、企業の「CSR活動」の一環としての取り組みや、行政の立場から地域と関わる仕事などが挙げられます!
そのため、「自分が地域においてどのように、どこをベースに関わっていきたいのか」を分析することが重要だと思います。そして「自分の未来におけるローカルキャリア」を多様な選択肢の中から見いだす、あるいは自分で新たに開拓していくのも1つの道ですね!
まとめ
今回、地域に関わる仕事を調べていく中で、「こういう働き方や地域との関わり方もあるんだ!」と私にとって新たな発見の連続でした。実を言うと、私は「地域に関わる仕事=地方創生・活性、地方発信」のイメージを強く持っていました。けれども、地域と関わる仕事はは必ずしも地方主体、地方だけがメインではなく、都市指向・発信の働き方というのも新たに発見し、全体を通してローカルキャリアに対する視野が広がりました!
また、今回のインターンシップを通して、「地域との関わり方における情報収集」にとどまらず、「興味がある地域へ足を運んでみよう!」という思いが芽生えました。そして、現在はローカルキャリアを築くための「素材探しの旅」を計画し、実行予定です!
「地域やまちに興味をもっている」から「ローカルを自分のキャリアの選択肢に!」
みなさんにとって、将来の地域やまちとの関わり方や考え方を見つめ直し、ローカルとキャリアを結びつける第一歩になればいいなと思います!
HATAFURIではあなたからの悩みを募集中!
HATAFURIお悩み相談室は、「まち」の未来を考え、ローカル業界をさらに盛り上げてくれる学生の皆さんが抱くお悩みを大募集!!ココロマチ社員と私たちインターンシップ生が全力で皆さんのお悩みにお答えしていくコーナーです。
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