『西野精器製作所』は総合試作工場として部品を少量生産している企業です。今回は、「試作工場」とはどのような工場で何を作っているのか、その様子を就業体験の流れに沿ってお伝えしたいと思います!
会社の基本情報
『西野精器製作所』はひたちなか市の山崎工業団地にある総合試作工場です。試作品を作る際に必要な部品の製造・加工を行っています。「社員の進化と技術発信」という理念のもと、先端技術や最新鋭の設備を用いて、先輩社員の指導や講習会により、新卒入社の社員でも精密部品を作れる技術者に成長できます。
体験スケジュール
■部品加工業とは?
私たち消費者が様々なメーカーから商品を選ぶように、メーカーも商品を作るために必要な部品を作ってもらう企業を選んでいます。「部品加工業」である『西野精器製作所』は、そういったメーカーから選ばれるために、コストや技術、納期、品質を磨いているのです。皆さんに馴染み深いのはメーカーが作る商品ですが、その商品を作るには欠かせない“部品”を作るのが「部品加工業者」なのです。
■少量多品種を生産する「総合試作工場」
『西野精器製作所』は、「総合試作工場」でもあり、メーカーが試作品を作る時の部品の生産を担っている工場です。ものづくりのプロセスの前段階として、メーカーがどのように製品を作るかを決めるため、数台の試作品を作る必要があります。その試作品のための部品を作るのが『西野精器製作所』であり、数量台から注文を受けています。
■加工技術の幅広さ
これに加えて、板金加工から機械加工まで対応できるのが『西野精器製作所』。広い加工技術を備えていることで、様々なアプローチで部品を作れるのです。お客様にとっても、加工内容によって発注先を変える必要がないというメリットもあります。
ごま粒サイズからバスケットボールサイズまでの小さい部品を取り扱い、受注できる試作品は1~1000個までという少量生産であるため、宅配による輸送も可能になり、工場から遠く離れた場所にあるクライアントとも取引が可能になります。低コストで短納期を実現できることも『西野精器製作所』ならではの強みです。
『西野精器製作所』には、
① 板金・プレス加工事業
② 機械加工事業
③ 微細加工事業
の3つの事業があります。
① 板金・プレス加工事業:板金棟
板金加工は薄い金属の板を部品に加工していく過程です。部品の凹凸をつくる曲げ加工や円柱などの形にする絞り加工ができるそうです。
② 機械加工事業:機械棟
機械加工により、円柱状や直方体状の金属を部品の形にしていきます。機械加工部ではプログラムから加工まで一人で作業をするのだとか。
③ 微細加工事業:微細棟
微細加工により、ごま粒サイズにもなる精密な部品が作られます。金属は温度により伸び縮みする性質があるため、恒温(室温23度)の工場のなかで加工することで高精度な部品を作り出せるのです。微細棟の中は、機械・板金部門の工場内と違って夏は涼しく、冬は暖かく感じるため快適!
まずは、営業です。営業といえば仕事を取ってくるというイメージですが、それに加えて、工程・時間・コストを割り出し、見積書をつくる必要があるため、加工に関する知識も求められます。
こちらの部署では、見積書の自動化ソフト導入のミーティングを見学させてもらいました。1日100件近く来る依頼に対し、営業と現場が都度相談しなければならず非常に手間と時間がかかっているという課題に対して、見積もりの自動化ソフトの導入準備をしていました。見積もりが自動でできるようになれば、より短納期を実現できそうですね!
昼食中、営業の北塚さんにお話を伺いました。
まず、私たちが文系の学生であることから、文系出身の学生でもこちらの企業に就職できるのかというお話に…。文系で経済学部出身だという北塚さんは、入社当時は図面を読むことに苦労したそうですが、文系出身の学生でも営業の仕事ができるとお話をしてくれました。出身以外の専門分野で活躍されている社員さんも多くいるそうです。
また、『西野精器製作所』の営業のお仕事は、会社が試作品工場で、同じ部品を作るのは一度きりという特性によって、営業社員が一人ひとり値段を決める権限を持っているため、お客様に柔軟な提案をすることができるのだそう。現場の自由意志が尊重されていて、営業に限らず、技術職でも、社員の資格取得をはじめとする「新しいことを勉強したい」という思いは通りやすい環境のようです。自分のレベルアップのために幅広い経験ができる環境だと感じました。
午前中に営業で作った見積書と、お客様からの図面をもとに、CADと呼ばれるコンピューターで部品を立体的に設計していく作業を体験しました。
思いのほか操作は簡単で、立体に再現したものを、今度は2DCADで展開図に落とし込んでいきます。この段階までくると、板金をどのように加工する必要があるのかが見えてきます。
作った展開図はデータで直接機械に送り込まれ、板金が加工されていきます。昔は紙媒体を使っていたそうですが、機械のデジタル化により、紙のコストが減りました。効率が良くなったことで短納期も実現できるようになったそうです。
まず紹介してもらったのは、ファイバーレーザー加工機。1枚の大きな板状の金属をレーザーによって切り取ったり、穴を開けたりしていきます。板金が天井まで届くほど高く積まれていて圧倒されました…。
これはパンチ・レーザー複合機です。この機械はレーザーで、金属加工と穴あけパンチのように穴を開けることができる機械です。なんとお値段は5,000万円したそうです!
そしてこれがベンダーと呼ばれる機械です。金属板を自由自在に曲げることができます。タッチパネル式のため、簡単に操作できるようになっています。
曲げ加工においては「俺の曲げ」という作品が優秀板金技能フェアで日本塑性加工学会会長賞を受賞するなど、高い技術が内外からも認められています。
最新の機械をたくさん見ていきましたが、とにかく最新の機械を取り入れれば良いという訳ではないようです。最新鋭の機械にも不得意分野があり、古い機械を使った方が良いこともあります。小さい工場でも、新旧の機械の組み合わせや使い方次第で大企業に負けない高い技術力が生まれるのです。これがものづくりの面白いところだとおっしゃっていました。
また、これらの機械は若手の社員さんが操作していたのも印象的でした。最新の機械の操作は、吸収の良い若手社員に任せられることが多いのだそうです。若いうちから企業の戦力になれるとは、やりがいも大きそうですね。
検査に合格後、表面処理や洗浄を経て、ようやく納品です。
学生の私が感じた『西野精器製作所』の魅力
今まで私は、中小企業の工場で働くことは単調な流れ作業の繰り返しであるというイメージを持っていました。しかし『西野精器製作所』は、試作品工場ということで、少量の部品を作ることができたり、最新の機械を導入していたり、日々新しいものを作ることができるので、ものづくりのおもしろさを感じることができる環境が整っている企業ではないかと感じました。
就活をする中で、実際に商品を作っている大手のメーカーを調べることが多かったのですが、そのメーカーが商品を作るために、部品加工業である『西野精器製作所』のような中小企業が非常に重要な役割を担っているということを体感することができました。地方の中小企業でも、全国各地のメーカーから発注がきて、様々な製品を作れるという点でもとてもやりがいのある仕事だと思います。
2020年には新工場へ移転し、さらなる最新機械が導入されるそうです。色々なものを作りたいというチャレンジ精神をもつ、ものづくりが好きな学生さんにオススメの企業です。また、地方にいながら、全国のものづくりの一端を担うことができるので、地域に貢献したいと思う人も活躍できると思います。就活中の学生の皆さん、ぜひチェックしてみてください!