中小ものづくり企業が大活躍! 『(株)西野精器製作所』社長に聞いた!“ものづくりの魅力”とは

この記事をご覧の学生の皆さん、少なからず「地方」や「地域」というものに対して興味があるのではないでしょうか?
そのような興味関心を持つ中で、「地方のものづくり中小企業」に興味を持ったことはありますか?

今回紹介する茨城県ひたちなか市にある『西野精器製作所』は、工業製品メーカーが使用する小型部品の試作をメインに行う中小企業です。地元ひたちなか市や近隣都市に拠点を構える日立製作所グループをはじめ、全国約200社と取引を展開。また、海外展開にも乗り出し、アメリカにある企業との取引実績もあります。
今回筆者は、『西野精器製作所』で実際に就業体験を行ってきました。その中で、社長へのインタビューをした際に感じ取った、働くことの魅力や、地域に対して果たす役割をお伝えしたいと思います!

社長インタビュー

量産には参入できなかった

――少量多品種の試作という業態をとるきっかけは何だったのでしょうか?

西野社長:父の代に行っていたビデオテープレコーダー試作が始まりだね。ただ、体系的に技術をマスターしないと競争は難しく量産には入れなかった。私も専門分野は工学系ではなく商社系だから、量産はできないと思ったからです。

――商社で働かれたご経験は現在活きていると感じますか?

西野社長:経理など実務的なことが頭と体に染み込んでいるので、納期管理が大事な今の仕事には役立っていると思うよ。

「商社では実務的なことが身についた」と西野社長(写真右)

ウチは設備力が違う

――『西野精器製作所』の強みは何でしょうか?

西野社長:まず中小企業というのは、お客さんと、社員と、設備、これが競争力の源泉だね。そしてウチは「設備で差別化している」と断言できる。

――おっしゃる通り、積極的な設備投資が印象的ですが、どのようにその決断をされていますか?

西野社長:例えば、5,000万円するレーザー加工機の場合「生産性は30倍、借金の返済は5年間、…」と考えていく。そうすると、人が取り組むのとレーザーが取り組むのでは、長い目でどちらが安いか計算できますよね。

 

これがそのレーザー加工機。買った当時は約1.1億円!

高性能の機械をフル活用し、繊細で高品質な部品を生産している。

――計算した結果、高くつく場合は機械の導入は見送るということですか?

西野社長:とも限らない。ウチは色々なことができるから、その分野だけでは儲からなくても「別の分野に役立って総合的にはメリットがある」となって買う決断をすることもあります。

何も言わなくても動いてくれる会社を目指す

――他にも差別化のポイントはありますか?

西野社長:新卒を採用しているから、社員力も違うと思う。お年寄りがスマホを使いこなせないの同じで、若い人がいないと新しい機械が使えないかもしれない。それでは、高い機械を買っても“宝の持ち腐れ”になってしまうので。

――新卒で入社した社員に対してはどのような教育制度がありますか?

西野社長:外部の先生から様々な分野の視点から見る「世の中のこと」を教わる時間を設けています。テクノセンターや産業支援センターの勉強会に行ってもらうことも多いです。

――面白い制度ですね。その狙いは何でしょうか?

西野社長:「こうあるべきだ」という強制はしないことで、社員一人一人が「世の中はこういうものだ」と自ら理解していってくれることを狙っています。その積み重ねで、社長が何も言わなくても動いてくれる会社を目指したいね。

西野社長(写真)への若手への期待は大きい。

――どのような人材を求めますか?

西野社長:現状維持でない、挑戦的な仕事を通して成長できるチャレンジャーかな。社員が成長することで、会社が知られ、仕事が生まれることにつながると考えています。

「毎回違うこと」と「できないことができるようになること」

――「試作」という業態の魅力は何でしょうか?

西野社長:量産は「いつも同じ」だけれど、試作の現場業務では、「毎回毎回違う」ことです。ウチは「作り方を自分たちで考える」から。あと、全社員が「できなかったことができるようになる」面白さを感じられる環境が整っていると思います。だから毎年1件ずつでも、「できない顧客の要求」に対して、設備や研究でなんとかして“できる”ようにしていきたいんだよね。

「試作だからこそいろいろなことができる」と西野社長(写真左)

「もっと頑張れ」と尻を叩かれている

――地域経済の未来の担い手として「地域未来牽引企業」に選出されましたね。

西野社長:「頑張っているから」というより、「もっと頑張れ」と言われているということだと思っています。

毎年『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』が開催される地元ひたちなか市を元気づけられるか

――なるほど。「地域を牽引していく」重みは感じていますか?

西野社長:私の責任は、「良い社員と良い教育、より良いものを作る」ことだと思っています。そうやって企業を成長させること。その結果として「人を呼び寄せる」という地域への効果が生まれるものじゃないかなと。

――西野社長、お忙しい中ご協力いただきありがとうございました!

 『西野精器製作所』は、その設備力と社員力で他の中小企業と一線を画しており、だからこそ、「地域未来牽引企業」としてひたちなか市の経済の未来を任されています。また、様々なものを少しずつ作る「試作」という業態だからこそ、幅広い仕事に触れることができる会社でもあります。

今回の取材を通して、『西野精器製作所』は「地方を自らの手で何とかしたい!」と考える学生、また純粋に「ものづくりで社会に貢献したい」学生にとっては、間違いなくやりがいを持てる会社であると強く感じました。自らの頭で作り方を考え形にする、様々なことを経験できる、といった特徴は、働くこと自体を楽しいと感じることにもつながるはずです。

ものづくりで地方を変えたい学生、『西野精器製作所』に来たれ!

学生の私たちが感じた『西野精器製作所』の魅力

①「毎日違う」仕事ができること
『西野精器製作所』は、「単純作業を繰り返す」量産工場ではありません。図面上にしかない、つまりまだこの世に存在しない部品を、自分で作り方を考えて製造し、取引先へ納める。そして、毎日、毎回異なる製品を作り出す。この会社のものづくりの現場に、単調な作業はないのです。「ものづくり中小企業」で働くことの意外な一面が見えてきませんか?

②若手社員への充実した教育と、大きな期待
「社員の成長なくして会社の成長なし」西野社長はこう強く語ります。特に若手社員に対する期待は非常に大きく、業界では珍しく現場社員の新卒採用を行っています。また教育の面でも、社員の主体性を高めるために外部講師による「自ら理解する」力を養う指導プログラムも取り入れるなど、若手の育成にかなり挑戦的です。

③地域経済に貢献する実感
経済産業省から地域未来牽引企業に選出されている『西野精器製作所』。これは、行政からこれからのひたちなか市あるいは茨城県の経済を引っ張っていくことを期待されている企業であることの証です。一社員として良いものを作り、会社の成長に貢献することが、地域経済を活性化することに結びつくのです。そして、その実感を得ることができるのがこの会社ではないかと、筆者は感じました。

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